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2011年創業、東北を拠点に若者支援・
まちづくり事業・組織づくりをする認定NPO法人

心理的安心安全な場づくり(SOKOAGE CAMPコラム)

2016年から実施している若者を対象とした合宿プログラム「SOKOAGE CAMP」

参加してくれた若者からは、
「SOKOAGE CAMPには自分のことを話しても大丈夫だ、と思える”安心安全”な環境がある」
という声をよく聴く。

ここでは「自分のことを話しても良いと思える」ということは、
日常では、「自分のことは話せない」という感覚があるということだろうか。
そして、「話しても良いと思える」を、可能にする”安心安全”とは、一体何なのか、どのように作られているのか。

6年間、250名以上の参加者を受け入れながら積み上げてきたことを、一度言葉にしてまとめながら、整理してみようと思う。

私から開示する

SOKOAGE CAMPは参加者・スタッフ合わせて10〜20名程度が集まり、3日〜1週間程度の合宿を実施する。
参加者は、現地で集まる前にオンラインで一度顔合わせをするが、ほぼ「はじめまして」の状態から対峙することになる。
初日数時間は、無言の時間が流れ、そして、それを埋めるように明るいやりとりが行われる。

プログラム冒頭におこなう自己紹介では、肩書きを共有することは少ない。
肩書きの前に、個々人の歩んできた人生を共有する。

どのように生きてきたのか、何を感じてきたのか。
そこではまず、スタッフから話し始める。

「参加者のみなさん、やってください」
ではなく、
「私たちから、私たちの内面を開示しますよ。」
という、勇気とスタンスが参加者の開示につながる。

本当は話したいんだけど、話せていなかったこと。
そういったことを、誰かが口火をきることで、「本当は話したかった、私のこと」が話されていく。
これが、参加者のいう「自分のこと」なのだろう。
日常では、”自分のこと”を話していないわけではなく、
私の”他者に話しても問題なさそうなこと”を、話しているのかもしれない。

CAMPで対話している

スケジュールのために場を進めない

SOKOAGE CAMPの”場の進め方”は、プログラムの中でも特筆すべき要素の一つだろう。
事前に6日間のスケジュールを確定させることはなく、当日のスケジュールは前日の参加者の状況をみながら決めていく。
さらに、前日に決めたスケジュールすら、当日の参加者を見ながら柔軟に変更していく。

夜まで対話が続き夜ご飯が遅れることもあれば、予定していたワークをやらず海に行くこともある。
運営スケジュールのために進行するのではなく、全ては”目の前の参加者にとって良い時間を作る”という目的に沿って場を進行していく。

教室でのワークショップ

それを実施するためには、先が見えないことや、予定を変更することに不安にならず、
「柔軟に対応できる!」と信じることができる”チーム”の存在が不可欠になる。

参加者や場を観察して気がついたことや感じたことはもちろん、
自分やチームのコンディションについてもコミュニケーションを丁寧にとりながら、
まずは運営チームの中に安心安全な環境を作っていく。

こうしたチームの心理的安全性が、プログラム全体の安心に繋がり、変化に向けた一歩を踏みだす重要な土台となる。

経験から学ぶ機会を

こうしたノウハウの蓄積は、まさにSOKOAGE CAMPを実施してきたことにより身につき、言語化されてきている。
専門書を読み解いて出来上がったわけではない。
そうした意味においては、SOKOAGE CAMPを実施してきた中で、一番多く学びを得てきたのは、私たちスタッフだろう。
一方で、SOKOAGE CAMPの需要が高いということは、日常にはそうした環境が広がっていないと捉えることもできる。

社会の中に、若者が立ち止まり、対話の中で内省を深めていける環境が増えていってほしいと思うと、
私たちの学びを広げていくこともSOKOAGE CAMPの使命なのかもしれない。
そう考え、”場づくりを地域で学ぶCAMP”を実施してみることにした。

進化を続けるSOKOAGE CAMPの存在意義をさらに広げ、形にする、新しい実験。
なにがおこるのか。また学びが蓄積されそうだ。


場づくりを地域で学ぶCAMPin有壁
日程:2023年10/7(土)-10/9(月) 2泊3日
参加費:50,000円
対象:社会人・学生
開催地域:宮城県栗原市有壁地区
募集締め切り:2023年9月29日(金)
※定員に達し次第募集を締め切ります。

斉藤 祐輔

認定NPO法人底上げ 副理事長

2011年、東日本大震災後に宮城県気仙沼市に入り、2012年にNPO法人底上げを設立。
生まれ持った強めの放浪癖と上手に付き合いながら、最近は暇を見つけて、山に登っている。